明治が大量の放射性物質を回収して法律上の問題は無いのだろうか/回収予定の粉ミルク40万個で約1千万ベクレル(推定最大汚染総量)
日本産科婦人科学会の見解(魚拓)では「たいへん微量であり、この粉ミルクから余分に受けた被曝に関して健康被害について心配する必要はない。」となっており、今回の粉ミルク騒動による個別の子供たちへの影響だけ切り取って考えれば心配ないのかもしれない。
しかし、個別の影響とは別に、明治が回収予定の粉ミルク40万個分の汚染総量を試算してみたところ、最大で約1千万ベクレルと推定できた。粉ミルク40万個を全て回収した後の1千万ベクレルの放射性物質の行方はどうなるのだろうか。明治がこれだけの量の放射性物質を回収することに法律上の問題は無いのだろうか。違法な放射性物質の取得・管理になるのではないのだろうか。「汚染がれき処理法」を活用すれば合法かもしれないが、まさか粉ミルクに適用されるはずもない。超法規的対応ということになるのかもしれない。
○試算根拠:
・1個あたり重量 0.85(kg/個)
×
・最大汚染値 30.8(Bq/kg)
×
・回収個数 400,000(個)
↓
・汚染総量 10,472,000(Bq)
○数値出典:
・粉ミルク汚染 安心の確保に行動見直せ - 西日本新聞(魚拓)
○参考:
・お知らせ:日本産科婦人科学会(魚拓)
・「検出」と「危険」じゃ意味が違う(粉ミルクの話) - アカチバラチの日記
「放射能対策」カテゴリの記事
- スイス・メテオメディア社のシミュレーション画像に「カラーバー」混入(2012年08月26日)(2012.08.27)
- 肺がん症例の16%はラドンガスの可能性(カナダ保健省の研究/2012年8月17日付け「ナショナル・ポスト紙」より)(2012.08.17)
- チェルノブイリ由来か?日食プレミアムピュアオートミールから1キログラム当たり7ベクレルのセシウム137を検出(2012年8月1日/香港食物環境衛生署食物安全センター)(2012.08.02)
- 警告:明後日2012年5月23日(水)未明に放射能が九州北部に到達の恐れ(2012.05.21)
- 北九州市長・北橋健治様:出席督促書に不服です/家庭での内部被曝を放置して「食育」を主張する教育委員会から2回目の出席督促書(2012年03月13日付け)(2012.03.15)
The comments to this entry are closed.
Comments
総量がどれだけ増えようが30Bq/kgは一緒でしょ。30Bq/kg1トンと30000Bq/kg1キロは放射性セシウム総量は一緒だけど後者の方が危険とみなされる。誤って摂取した時等に摂取する量は一緒だから、濃度が問題なのは当然ですね。
今回の放射性セシウムの影響は28g/日を31日摂取した場合、経口摂取でのSv換算で0.00064mSv。もともとこの粉ミルクに含まれる放射性カリウムの影響は28g/日を31日摂取した場合、経口摂取でのSv換算で0.013mSv。つまり今回のセシウムがミルクに与える影響は、もともと経口摂取で影響を受ける放射線量を5%増すくらい。これが保有を規制されるなら、もともとのミルクも保有量を規制されると思われます。
Posted by: yuu | Dec 10, 2011 01:14 AM
yuu 様
>総量がどれだけ増えようが30Bq/kgは一緒でしょ。
記事本文のどこをどうお読みになればそのようなコメントが出て来るのでしょうか。論点が完全に外れています。
この記事は「総量」を問題にしています。濃度が低くても40万個を集めればそれなりの量になります。明治はどのような法的根拠でそのような大量の放射性物質を回収するのでしょうか。回収後はどのような管理を予定しているのでしょうか。
ちなみに、クリアランスレベル(100Bq/kg)を根拠としているのであれば、国の権限で認定を受ける必要があり、私企業が勝手に判断できるものではありません。
記事に書いた通り、現状では超法規的対応を取らざるを得ないでしょう。これでいいのだろうか、という問題提起です。
Posted by: 中村友一 | Dec 10, 2011 10:59 AM
規制対象にならない放射線量の「総量」を論点にしている事がおかしいと言っているんです。0(対象にならない)にいくら掛けても0のままって事。放射性同位元素は「一定以上の濃度」+「一定以上の量」で規制されます。この「濃度」ならば放射性同位元素にも放射性廃棄物にもならず、一般廃棄物です。もちろん濃縮等の行為が加われば話は別ですが。
おかしいと思うかもしれませんが、総量だけが問題になるならバナナの熟成倉庫や汚染されていない粉ミルクの保管庫もK40の総量規制にひっかかってしまいます。
つまり超法規的対応など必要なく、明治がどう廃棄するかは単にモラルの問題ということです。
Posted by: yuu | Dec 10, 2011 04:18 PM
yuu 様
>0(対象にならない)にいくら掛けても0のままって事。
クリアランス制度の検認は国の権限で行うものです。yuu様はどのような法的権限に基づいて規制の「対象にならない」と主張なさるのでしょうか。
クリアランス制度ではK40は指定されていないようですが何の関係があるのでしょうか。
これはモラルの問題ではなく法規法令の問題ではないのでしょうか。
Posted by: 中村友一 | Dec 10, 2011 04:43 PM
まず最初にあなたの言われるクリアランス制度は原子炉等規制に謳われているものですよね?これは「原子力施設において用いた資材」を対象としたものですから、今回の事故で飛散した放射性物質に対しては適用されません。災害廃棄物に適用することが適当ではないと環境省も見解を示しています(5月2日)。
次にこの粉ミルクの回収があなたのいう「違法な放射性物質の取得」にあたるかどうかについてですが、放射性物質の使用や廃棄等については「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」で規制されています。
この法律で「放射性同位体」として規制される物質と条件は「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」に示されており、セシウム137では(とりあえず1種類ということで話を進める)10Bq/gかつ数量10000Bq以上となっています。そのため10Bq/g以下のセシウム137はそもそも使用や廃棄を規制されないということなのです。
ちなみに、「取得」の可否の判断にクリアランスレベルを用いるとは想像できませんでしたので、この法律にあるK40の規制を想定してK40の話をしたのですが混乱させるだけになった事は反省します。
そもそも食べても良いとされている食品を大量保有することが法に触れるなんてありえないでしょう。
もし「超法規的」の意味を「まだ法で明確に規制されていない」と考えておられるのでしたらそんなに変じゃないかもしれませんが、本来の「定められた法を例外的に超えて行う」という意味でしたら違うといえるでしょう。
Posted by: yuu | Dec 10, 2011 08:41 PM
yuu 様
>災害廃棄物に適用することが適当ではないと環境省も見解を示しています(5月2日)。
環境省が5月2日に示したのは「参考」だけです。法令に定められた省令でも通達でもありません。根拠がこれだけなら超法規的対応です。
Posted by: 中村友一 | Dec 10, 2011 10:30 PM
「超法規的対応」と言うためには「どれだけ薄い濃度だろうが、放射性セシウムの総量○○ベクレル以上の保有等を禁ず」等の法令が存在しないといけないという理屈がわかりませんか?
どうしても「超法規的」と言いたいならばその法令を見つけ出してください。
私は自主回収が超法規的で、回収せずにそれを食べさせることが合法であることはありえないと思っていますし、そんな法律があれば他の法律との矛盾が山盛りなので、探しませんが。
自然界にも放射性物質はあるのですから規制の前提条件に「濃度」があることは当然(つまり一定濃度以下は規制無し)だと思います。
クリアランス制度にしても対象となっていない物質を当てはめても「違法」にはならない(灰に対しても適用しておられましたが)ので、超法規的ではありません。法において対象物を限定するのは基本ですのでまずそれを押さえた方が良いかと思います。
なお、5月2日の見解ですが「クリアランス制度の濃度をあてはめて判断するのは不適当」というだけで「クリアランス制度の対象だけど除外する」という意味ではないと思いますので、私が言いたかったのは「そんな別の法律から引用した見解を示すくらいだから他に規制する法令はないんですよ」ということです。
特措法等から簡単に言えば「廃棄物処分場までは高濃度(指定廃棄物)以外は無視するが、焼却後に濃縮された灰や脱水後の汚泥の管理を徹底することで対応する」という考えで良いかと思います。
これ以上は揚げ足の取りあいになるかと思いますので「規制する法律がある」もしくは「クリアランス制度の対象物質となる」ことが判明した時のみコメント(謝罪になるかな?)させていただきます。長文でのブログ汚し失礼しました。
Posted by: yuu | Dec 11, 2011 02:57 AM
yuu 様
>規制する法律
「放射線発散処罰法」(放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律、平成十九年五月十一日法律第三十八号)第三条では「放射性物質をみだりに取り扱うこと」を規制しています。
>クリアランス制度の対象物質
文部科学省令第49号(試験研究の用に供する原子炉等に係る放射能濃度についての確認等に関する規則、平成十七年十一月三十日文部科学省令第四十九号)別表で「134Cs」「137Cs」の濃度「0.1」「Bq/g」など33核種が対象物質となっています(K40は対象外)。クリアランス制度の検認は国の権限で実施されますので民間で測ってこの濃度以下だから良いとったものではありません。仮に議論するにせよ、ストロンチウムなど他の31核種について調べてから判断すべきだと思います。
>特措法等から簡単に言えば「廃棄物処分場までは高濃度(指定廃棄物)以外は無視するが、焼却後に濃縮された灰や脱水後の汚泥の管理を徹底することで対応する」という考えで良いかと思います。
特措法(汚染がれき処理法)は関連省令が出されていないので判断は保留すべきでしょう(環境省の委員会が検討中のようです)。
>長文でのブログ汚し失礼しました。
具体的な議論検討であれば長文でも歓迎します。
Posted by: 中村友一 | Dec 11, 2011 06:50 AM
>放射線発散処罰法
これは「処罰」を決めた法律であり、「具体的にどのレベルが違法」と定めた法律ではありませんよね?法の目的といいテロへの対策なのは明白ですので、明治の問題が適用されることはありえないでしょう。濃度的にも「人の生命に危険」と判断されるわけないですしね(されるなら食品の基準はもっと下がってる)。
テロ以外に対しては「原子炉等規制法」など別の法で「違法」の判断がされますが、原子力関係者以外も規制される「放射線障害防止法」で(前述したとおり)明治のミルクは「放射性同位元素ではない」とみなされますので、(届出等しなくても)違法ではないという判断になります。
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/faq/1261279.htm
>クリアランス制度
言葉の選び方が悪かったですね「対象物質」を「規制の対象となる廃棄物等」に置き換えて読んでください。
クリアランス制度の対象となる者は原子力事業者等です。原子力事業者等は「製錬事業者、加工事業者、原子炉設置者、外国原子力船運航者、使用済燃料貯蔵事業者、再処理事業者、廃棄事業者及び使用者」と定義されています(使用者は核原料、核燃料の使用の許可を受けた者)。つまり自治体や一般企業、一般人は対象となっていないのです。この法律自体が「核原料物質」「核燃料物質」「原子炉」を規制するための法律だから当然ですが。
クリアランスレベルの設定については事業者ごとに管轄府庁が異なりますが例えば文部科学省では対象を「原子炉に係る原子炉設置者又は使用者が工場等において用いた資材その他の物」としています。
これらから「対象となる事業者等でもなく、対象となる廃棄物等でもないのにクリアランス制度を適用するのは無理」と言っているのです。仮に「超法規的対応」でこれを適用したとしてもこの記事で問題とされている「総量」は関係ないですよね。
また長文になったのでまとめますと
①クリアランス制度は限定されたもの(原発リサイクル)に適用する制度だから今回は適用されない
②その他にこのレベルの放射性物質が含まれた食品の保有等を禁じる法律はない
③よって「超法規的対応」は必要ない
以上3点です。
Posted by: yuu | Dec 11, 2011 02:09 PM
yuu 様
>>放射線発散処罰法
>これは「処罰」を決めた法律であり、「具体的にどのレベルが違法」と定めた法律ではありませんよね?法の目的といいテロへの対策なのは明白ですので、明治の問題が適用されることはありえないでしょう。濃度的にも「人の生命に危険」と判断されるわけないですしね(されるなら食品の基準はもっと下がってる)。
「具体的にどのレベルが違法」かの定めが無いのでどんなに微量でも規制の対象です。法の目的云々は検察が運用することですが法理論上は適用の可能性があると思います。
(例)回収したミルクが第三国への輸出に転用されることを危惧して「国際食品テロ」として適用し得る。
比較的新しい法令で適用事例も判例もないので判断は保留するのが妥当でしょう。
>「放射線障害防止法」
この「法の目的」はRIを用いた医療施設や研究施設の運用管理が主であり、原子力施設の資材とは無関係です。
>これらから「対象となる事業者等でもなく、対象となる廃棄物等でもないのにクリアランス制度を適用するのは無理」と言っているのです。仮に「超法規的対応」でこれを適用したとしてもこの記事で問題とされている「総量」は関係ないですよね。
クリアランス制度についてはyuu様が最初に「濃度」に言及されたことに対して「仮に適用するならば」ということで俎上に挙げたものです。「総量」と関係すると私が主張したことはありません。これは藁人形です。
Posted by: 中村友一 | Dec 11, 2011 03:46 PM