【空想】百万年の遺産【少なくとも1万年くらい先までは】(星新一のショートショート風)
1.田舎町
静かな田舎町で大地震が起こった。幸いにも人的・経済的な被害はほとんどなかったが、町はずれの地層が数百メートルに渡って隆起し、中から大規模な遺跡が出現した。
小さな田舎町は一変した。研究者、役人、マスコミ、野次馬と大勢の人々が次から次に襲来し、大いに賑わった。
考古学チームが地層から推定した年代には皆が驚愕した。なんと1万年前の超古代文明ではないかと言うのだ。遺跡から出てきた人工物はどれも現代に匹敵する高度な科学技術が無いと作れないものばかりであるにもかかわらず、有史以前の超古代文明だということで、世間を一層沸かせる事となった。
やがてその田舎町は巨大な観光スポットに早変わりした。もともと大した産業もない小さな町だったが、多くの観光客が訪れる豊かな町になった。
研究が進むにつれ、遺跡の様子が次第に判明してきた。今は豊かな緑ある町だが、遺跡ができた1万年前は乾燥しており、砂漠に近い厳しい気候だったようだ。
遺跡は小さな村なら丸ごと一つすっぽり入ってしまうほどの広大な面積があり、地表に隆起して見えた部分はそのほんの入り口に過ぎなかった。非常に堅固な外壁で四方八方・上下左右を囲われており、研究者は「何かを閉じ込めようとしていた」と考えた。しかし、空調と思われる配管や装置の痕跡も同時に発見されており、内部は一定の温度を保つことができたのではないかと考えれられている。
奇妙なのは出土された人工物の破片だ。それは元々はかなりの重量を持った円筒形の物体の一部であったと考えられている。元の物体は推定でなんと数千万個はあっただろうと言うことだ。正確な個数は発掘から3年を経過してもなお分からない。原形をとどめているものは無く、破片がごろごろ転がっているだけであったが、研究者がパズルのように復元したことでそのおおよその形状が判明した。
研究者によると、人工物は10歳の男の子くらいのサイズの円筒形で、表面は薄い金属で覆われ、内部はガラス質の「何か」がぎっしり詰まっていたようだ。人工物が何であったのか多くの研究者が調査したにもかかわらず、謎は深まるばかりであった。その謎めいた雰囲気はさなる遺跡ブームを呼び、誰も彼もが様々な推測をしては議論を楽しんだ。
町が観光名物として人工物の破片を透明なカプセルに入れて小型復元模型とセットで発売したところ、たちまち人気を博し、世界中で飛ぶように売れた。町はさらに豊かになった。小さな破片などまさに山のように転がっており、いくらでも売ることができた。子供には特に人気で、世界中の親たちが子供に買い与えるようになった。また、定番の学習教材として使われるようになり、世界中のあらゆる学校に配布された。さらには「縁起が良い」として多くの若い女性が身につけるアクセサリーとなったり、日用品に埋めんだブランド商品となったりして大流行した。世界中の誰もが少なからぬ個数の破片と身近に接するようになっていた。
2.発展と衰退
発掘から5年後、町は世界中からやって来た大勢の観光客でごった返していた。遺跡を再現したテーマパーク、観光客向けのホテル、土産物屋などが立ち並ぶちょっとした都市に発展していた。
ところが町の発展と歩調を合わせるかのように、住民の中から原因不明の奇妙な病に倒れる人が急増していた。始まりは2~3年前から、頭痛や倦怠感などを訴え寝込んでしまうという症状だったが、人数が少なかったため大きな関心を引かなかった。それが今では、その程度こそ違うものの、子どもから老人に至る多数の住民に同じ症状が現れている。その病気の原因や治療方法を医者達が懸命に調べたものの明らかにできなかった。
そして、住民の他にも遺跡の研究チームが同様の症状に悩んでいた。やがて病気の原因は遺跡にあるのではないかと考えられるようになり、観光客は激減した。
発掘から6年を過ぎたころ、遺跡の研究に最も熱心だった研究者が死亡し、ついには町の住民も次々と死亡し始めた。
発掘から10年後、町の住民は全員が病に倒れ、そのほとんどはすでに死亡していた。観光名所として発展した町は廃墟と化し、謎の病気を怖がって誰も近づかなくなった。
3.遺跡の呪い
世界中の人々がその病気と遺跡の関係を確信していたが、遺跡の謎と同じように、詳しい事は全く謎だった。ある人が「遺跡の呪いだ」と言うと多くの人々がそれを信じた。
発掘から15年後、今度は世界中で、赤ちゃんのほとんどが生まれた時にすでに死んでいるようになった。無事に生まれ成長する僅かな子も知能の発達に問題があったり体のどこかしらが不自由だったり大きな病気だったりして、まともに育つ子供が完全に消えてしまった。
4.次の1万年へ
発掘から100年後、僅かな人々は生き残ったが、文明は消えた。野蛮な人々と、数多くの遺跡の破片が世界に残された。
おしまい(だといいのだが)
※この記事は空想である。少なくとも1万年くらい先までは。
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