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Jul 27, 2011

エステー株式会社が発表した税込み15,750円の家庭用放射線測定器「エアカウンター」から感じる疑問

昨日(7/26(水))エステー株式会社が発表した税込み15,750円の家庭用放射線測定器「エアカウンター」から感じるもやもやした疑問を列挙してみよう。上図はエステー株式会社から発表された「エアカウンター」の写真。

・なぜシンチレーション式なのに(※2011.08.05(金):「シンチレーション式」は削除訂正→ページ末尾に関連追記、以下同)「測定範囲 0.05μSv/h~9.99μSv/h」なの?同じくシンチレーション式で国産のPA-1000 Radi(ラディ)(堀場製作所)の「測定範囲:0.001~9.999μSv/h」に比べて精度が10分の1しかない。この値段でこの性能なら、「2万円未満」と報道された「ナノセンス」を早く市場に入れれば良いと思うが誰が止めているのだろうか。

なぜエステー株式会社なのだろうか。この分野が得意な国内メーカーは他にあると思うが、どうなっているのだろうか。

なぜ「監修者」を前面に出すのだろうか。私の知る限り、このようなPRの仕方をする放射線測定器はこれが初めてだ。しかもその監修者がなぜ福士政広氏なのだろうか。貧乏な消費者に「どうだ、悔しいだろう?」と喧嘩を売っているとしか思えない。上図はエステー株式会社から発表された福士政広氏の写真。


疑問はさておき、この製品は今年10月に出荷予定とのことだ。発表通りの内容なら、これは売れる。それと同時に、他の放射線測定器の市場価格にも大きな影響を与えるだろう。


以下、ネット上の関連情報へのリンクをまとめておく。

・「エアカウンター」のプレスリリース:
生活者の不安を解消するため首都大学東京と共同開発 家庭用放射線測定器「エアカウンター」を新発売/一般家庭で安心して使える性能と価格を実現!

製品概要(上記のプレスリリースから抜粋):

(抜粋ここから)

品名 エアカウンター
希望小売価格 税込み15,750円
発売日 2011年10月20日(出荷数:1万個を予定)
ルート 関東、東北を中心としたドラッグストア、ホームセンター
インターネット通販など
付属品 単4形アルカリ乾電池2本、小冊子、取扱説明書(保証書)、シリコンジャケット
電池寿命 約2ヵ月(1日1時間、アルカリ乾電池使用)
表示数値 1cm線量当量率
検出器 Si半導体(PD)
測定対象 ガンマ(γ)線(Cs-137基準)
測定範囲 0.05μSv/h~9.99μSv/h
指示誤差 ±20%(測定完了時)
測定時間 最長約10分(放射線量による)
本体サイズ 約 82mm×62mm×34mm
本体重量 約 105g
校正 校正定数による表示補正済み
年内生産予定数 合計5万個

(抜粋ここまで)


以下は「エアカウンター」監修者の福士政広氏について:

教員紹介 福士 政広 首都大学東京

原発業界御用学者リスト @ ウィキ - 福士政広

嘘つき福士政広、それをタレ流すNHK ≪ ARecoNote3

江戸川区主催・福士政広講演会のご案内ビラ - 生きぬくために闘う!東日本大震災救援対策本部のブログ - Yahoo!ブログ

◆本部ニュース109号発行! - 生きぬくために闘う!東日本大震災救援対策本部のブログ - Yahoo!ブログ

東京電力・福島第一原子力発電所事故以前の東京都葛飾区の空間線量率(PDF、292KB)


引き続き調査し、続報があれば追記する。


※2011.07.27(水)16:33追記:
関連記事「「エアカウンター」(エステー株式会社)が「みんなー」のAAに見えたので合成してみた」を掲載した。

※2011.07.27(水)18:30追記:
ツイッター上で「シンチレーションじゃない」という指摘があったので再度スペックを確認した。

公開情報によると「検出器 Si半導体(PD)」となっており、何らかの固体(ヨウ化セシウム結晶かな?)+Si半導体(PD)によるシンチレーション方式だと思われる。

固体シンチレーション無しで直接放射線を検知できる最新技術の「Si半導体(PD)」があるのだろうか。それとも「Si半導体(PD)」という型式の最新型のGM管があるのだろうか。

間違い等あればご指摘いただきたい。

※2011.07.27(水)19:05追記:
プレスリリースを再々度確認した。当該の素子については下記のように説明されている:

「測定の仕組みは、放射線1本が入ると半導体センサーが反応し、発生した電荷を信号に変えてカウント」

「半導体センサーには、医療機関で使用されるエックス線計測器の技術を応用したシリコンフォトダイオードを使用」

これに該当する素子を検索したところ、浜松ホトニクスのSiフォトダイオードの「X線検出素子」があった。

これは「Siフォトダイオードとシンチレータを組み合わせた製品です。セラミックシンチレータはCWOに比べ約1.8倍の高感度を実現しています。セラミックシンチレータは高感度と高信頼性を、CsIは高感度と低価格を実現しています。」となっている。すなわち、この素子はセラミックを用いた固体シンチレーション方式ということになる。

エアカウンターが同じ素子を用いているかどうか分からないが、「Si半導体(PD)」の「PD」は光検出のことで何らかの物体のシンチレーションを拾うという意味ではないかと思う。

ご存知の方がいたら是非ご教授いただきたい。

※2011.07.27(水)19:25追記:
上記の浜松ホトニクス製の素子の説明にあった「CWO」は「CdWO4」すなわち、従来品はカドミウムを含む素材を用いているとのことだ。

参考:
シンチレータの工業用途(セキュリティー、検査ほか)への展開|東芝マテリアル

以上、話の流れとは直接関係ないが、メモとして記しておく。

※2011.07.28(木)04:51追記:
ツイッター上で「シンチレーションじゃない」という指摘をされたご本人に(他に連絡方法が無いため已む無く)ツイッター上で問合せを行い、私の見解を説明した。

なお、今回は「この問合せのためだけの目的」で急遽ツイッターアカウントを作成した。このアカウントは通常は放置する予定であり、半年後にはアカウントが消えているかもしれないのであしからず。

私の問合せに対し、ツイッター上で概ね下記のような反論があった:

(1)「半導体検出器」「シンチレーションカウンターとは分けて考えられている
参照:半導体検出器Wikipedia

(2)「固体の電離作用を利用した測定器に分類される
参照:医療人のための放射線防護学高田純(札幌医科大学教授)著/株式会社医療科学社)の見本ページ(PDF、42.3KB)

ということで、現時点ではメーカー(浜松ホトニクスおよび東芝マテリアル)の記述が否定されたままである。

※参考:原発業界御用学者リスト @ ウィキ - 高田純

メーカーなどに(念のために)問合せを行い、変化があれば追記したいと思うが、本件は「ホームページ」vs「Webページ」のように、マスコミや一般人の慣用表現が事実上の標準となって学術的・技術的に正しい専門用語が駆逐される現象に似ているような気がする。

本件につき詳細をご存知の方がいたら是非ご指摘いただきたい。

※2011.07.29(金)00:13追記:
ツイッター上で「シンチレーションじゃない」という指摘をされた件で、今朝のうちにメーカー2社(浜松ホトニクス、東芝マテリアル)に問合せを行ったところ、夕方までに浜松ホトニクスからメールで丁寧なご回答を頂いた。それによると、上記で挙げた「X線検出素子」はシンチレーションカウンタに不適で、用いるとしたら素子の構成を考えなければならないとのことだ。少なくとも浜松ホトニクスの「X線検出素子」「エアカウンター」の説明にある「医療機関で使用されるエックス線計測器の技術を応用したシリコンフォトダイオード」に該当しないようだ。

参考:
浜松ホトニクスのX線検出素子
Siフォトダイオード(S8559)X線モニタ用検出器(PDF、87KB)

ツイッター上でご指摘いただいたrichoutan様の情報などから調べたところ、浜松ホトニクスからSi PINフォトダイオード(大面積型)を用いて「シンチレータ無し」で放射線計測器を構成する回路例が下図の下段「10.γ線、X線検知器」のように示されていた。なお、図の上段「9.CTスキャナ、X線モニタ・センサ」はシンチレータを用いる回路だが、参考までに並べて示す。

Siフォトダイオード応用回路例(PDF、73.8KB)

この回路例にある素子のデータシートを見ると下図のような特性になっている。

Si PINフォトダイオード(S3590-08、S3590-09)X線用大面積フォトダイオード(PDF、110KB)

仕様には400~1100nmくらいの応答しか記載されておらず、シンチレータ無しではγ線やX線(pmオーダー)に対する動作は全く保証されていない。しかし「回路例」のように構成すれば仕様の保証範囲を超えて放射線を検知するらしい。

不思議な話ではあるが、これが「シンチレータ無し」で動作する「半導体式」に分類されるものであり、これまで半導体を用いた放射線検知は全てシンチレーション式であると勘違いしていたが、これは誤りであったようだ。ご指摘いただいたことに感謝したい

さて、本題に戻って「エアカウンター」だが、プレスリリースの「検出器 Si半導体(PD)」という説明だけではシンチレータの有無が判断できない。精度が低いことから考えるとシンチレータ無しとも思えるが断定できない。ダメもとでメーカー(エステー株式会社)に問合せてみたい。新たに情報が得られたら追記する。

※2011.07.29(金)05:41追記:
シンチレータ無しの可能性がある」とは思うが、なぜかツイッター上では「エアーカウンターはフォトダイオードで決着」となっている。

プレスリリースに「検出器 Si半導体(PD)」と記載されており、フォトダイオードであることは最初から明らかだ。その前のツイートでその筋では有名な方が同様にシンチレータが無い旨を主張しているので、文脈上は「シンチレータ無しで決着」という意味のようだ。そうだとすると、そう断言する根拠は何なのだろうか。残念ながら明示されていないので、私の知らない範囲の「何か」があるようだ。不思議な話だ。

最終的にはエステー株式会社から正式に回答を頂くか、購入者の分解レポートがあって「決着」が付く問題だと思うので、分かり次第追記する。

※2011.07.29(金)06:10追記:
ここまでツイッター上で特に色々ご指摘いただいている方について調べてみたところ、専門分野では有名な方のようだ。その方の著書と思われる本があったので下記に紹介しておく(アマゾン):

※2011.07.29(金)09:58追記:
本文とは全く関係ないが、ツイッター上で 「@kikumaco さんに失礼」との指摘があったので簡単に補足する。

(1)「その筋では有名」:
@kikumaco様については、
ニセ科学に対する警鐘を通じ科学リテラシの啓蒙を行っている。
・911陰謀で激しい論戦を繰り広げられている(現時点までに@kikumaco様がほぼ全面勝利の状態)。
といった分野で独特のスタイルを持って活動しており、人によって好き嫌いの分かれる方であり、これらの分野では有名な方だ。

(2)「主張じゃなく事実の提示」:
@kikumaco様のツイッター上の発言は事実の提示であり直接反論する余地は無く、私から@kikumaco様に何か返信する必要も感じられない。ツイッター上で明示的に「シンチレーションじゃない」と発言されたのはrichoutan様のみだが、それに対しては(不本意ながらツイッターアカウントをわざわざ作成してまで)直接の問合せを行った。

繰り返しになるが、richoutan様に対しては色々ご指摘いただき、シンチレータ無しの半導体方式に関して誤解が解け、新たに様々な知見を得る事もでき、感謝している。また、「シンチレータ無し」の「可能性」は私も認めているので調査を継続する。

しかし、「検出器 Si半導体(PD)」という説明だけを根拠に、公式発表もなく、分解調査も無く、「シンチレータ無し」と「決着」する姿勢は理工系の思考手順としては問題はないのだろうか。この主張に誤りがあればご指摘いただきたい。

※2011.07.30(土)08:08追記:
本題とは全く違う方向ではあるが、ツイッター上で繰り返しご指摘をいただいているようなので再度補足しておく。

高名な方々から繰り返しご指摘いただくことは、その内容の如何に関わらず、私のような弱小零細ブログ管理者にとって大変な栄誉だ。ご指摘は全て私の無知や誤解が発端となっているものだろうから感謝すべきことだと思う。しかし、私の人格についての指摘ではなく具体的・技術的な指摘をいただければ良いのにとは感じる。

これまで「シンチレータのあるサーベイメーターの仕様説明は業界団体の慣例でシンチレータであることを明記することになっている」とか「半導体素子メーカー各社の製品のデータシートを確認したが、PDと記載されているものは必ずシンチレータ無しとなっている」等の具体的な根拠が無いか、色々と調べているが、私の方では分からなかった。ご指摘いただいた方々はきっとご存知なのだろうが、ご教授いただけず残念だ。また、私自身も無知無能であり、恥ずかしい限りだ。

以上、ご指摘いただいた皆様は理工系で、その道ではそれなりの専門家であると思っており、ご指摘についても相応の思考手順を踏んでいると期待して書いている。そうでなければ期待する方が間違っているので、全て訂正してお詫びする。

なお、エステー株式会社には問合せ済みだが、内容的にも社会的な状況からも回答が得られない可能性が高いと考えている。10月の発売後にどなたかが分解レポートを公開してくれるのを待つしかないかもしれない。

また、「X線検出素子」に関して、東芝マテリアルから昨日7/29(金)夕方にメールでご回答を頂いたが、内容が限定的なので見解を出せないとのことだった。

※2011.07.31(日)09:00追記:
本題では無いが「あなたまともに調べてますか?」とお問い合わせがあったので補足する。

私がrichoutan様にお問い合せする前に調べたのは「このブログ記事へのリンク」を含んでいるツイートを検索するページ(ツイッターの検索機能で、ココログの各記事の下に自動的に付加されているボタンを押すと表れる)だ。その時、検索結果は2件しかなく、そのうちの1件が「シンチレーションじゃない」とご指摘いただいたツイートだ。Google等で調べたところ、他に「シンチだ」「いやシンチじゃない」と意見が分かれていたため、引き続き調べていたが、確定的な情報が中々見つからなかった。そこで「名指しでご指摘」を頂いたツイートにお問い合わせするに至った。

「まともに調べる」という範囲があいまいなので意図とは違うかもしれないが、その時点では私が考えうる限りの検索を行っていた。私は普段はツイッターを利用していないためご指摘のツイートを検索する能力がなかった。

ちなみにご指摘のツイート「多分」と慎重な表現がなされており、確定的な情報は提示されていない

※2011.08.05(金)09:11追記:
上の追記にも記している通り、先週末(7/29(金)未明)、エステー株式会社の送信フォームから疑問点を問い合わせていた。全く期待していなかったが、昨日(8/4(木))夕方、エステー株式会社お客様相談室からメールで丁寧な返信を頂いた。その結果、「エアカウンター」が「シンチレータ無し」の半導体方式であると確認できた。このため、本文冒頭部分で記載していた「シンチレーション式」に係る記載2か所を削除訂正した。

実は今回の返信メールにはこの他にも大変興味深いことが書かれている本来ならば詳細に公開したいところだが、送信フォーム利用時に提示された注意事項(PDF、75KB)にて「弊社からのEメールによるお返事は、お客様個人宛にお送りするものです。内容の一部または全ての転載および二次利用はご遠慮下さい。」と非常に閉鎖的な制限が課せられていたため、残念ながらここでは記載しないエステー株式会社から個別の同意が示されない限り、現時点では私から公開する予定は無い)。

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Comments

こんばんは。
もし、スペックやトリセツを含めてのやらせがあったら、なかなかのものです。
注意深く見守りながら、未来に悪影響がないように行動していきたいと思いました。

Posted by: 十五夜 | Jul 28, 2011 at 04:13 AM

十五夜 さん、コメントありがとうございます。

あまり考えたくは無いのですが、この製品に関しては色々と疑問を持たざるを得ません。

な微妙な感度設定、取説の誘導などはあるかもしれません。引き続き注目します。

Posted by: 中村友一 | Jul 28, 2011 at 01:06 PM

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