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Jun 22, 2011

『ゲッベルスは「嘘も100回言えば本当になる」と言った』というのは嘘

正確には「もしあなたが十分に大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう。」が直訳。ゲッベルス自身が「100回言えば」と言ったという原典はネット上には無いようだ。

※冒頭の写真はWikipediaから。


以下、詳細説明:

『ゲッベルスは「嘘も100回言えば本当になる」と言った』というフレーズは、広告・宣伝、心理学、政治学などに関わったことのある人ならば「100回」くらいは見聞きした事があるだろう(一般人でも何度となく見聞きしたことだろう)。この変形版で「100回繰り返せば」「事実となる」など言い回しの違うものもあるが、「100回」というキーワードは共通している。

この言葉にはいくらかの真実が含まれているし、そうであるからこそ、頻繁に引用されているのだろうと思う。

これがどういう状況で発せられた言葉なのか興味があったので、その出典を以前(少なくとも2007年以前)から探していたが、英語・ドイツ語の資料も含め信頼できそうな情報になかなか当たらなかった。

たとえば、Wikipediaの「情報操作」の項には次のように「引用」されているが、「要出典」となっていた(出典があるなら是非とも知りたい):
>反復(Повторение)
>同じフレーズを反復して、人々の記憶に刻み込ませる。嘘も百回言えば真実となる(ヨーゼフ・ゲッベルスの言葉)[要出典]。

しかし、先日(6/17)、やっと信頼できそうなドイツ語のフレーズがネット上で見つかった。下記にその引用を、ドイツ語(オリジナル)、英訳(Google翻訳)、和訳(英文からの中村訳)の順で示す:

(引用ここから)

【ドイツ語】(オリジナル)
Wenn man eine große Lüge erzählt und sie oft genug wiederholt, dann werden die Leute sie am Ende glauben. Man kann die Lüge so lange behaupten, wie es dem Staat gelingt, die Menschen von den politischen, wirtschaftlichen und militärischen Konsequenzen der Lüge abzuschirmen. Deshalb ist es von lebenswichtiger Bedeutung für den Staat, seine gesamte Macht für die Unterdrückung abweichender Meinungen einzusetzen. Die Wahrheit ist der Todfeind der Lüge, und daher ist die Wahrheit der größte Feind des Staates.

【英訳】(Google翻訳)
If you tell a lie big enough and repeated often, then people will believe it at the end. You can claim a lie as long as it manages the state to shield people from the political, economic and military consequences of the lie. It is therefore of vital importance to use for the state, its entire power for the suppression of dissent. The truth is the mortal enemy of the lie, and therefore the truth is the greatest enemy of the state.

【和訳】(英文からの中村訳)
もしあなたが十分に大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう。嘘によって生じる政治的、経済的、軍事的な結果から人々を保護する国家を維持している限り、あなたは嘘を使える。よって、国家のために全ての力を反対意見の抑圧に用いることは極めて重要だ。真実は嘘の不倶戴天の敵であり、したがって、真実は国家の最大の敵だ。

(引用ここまで)

出典(ドイツ語オリジナル):
 pressemeldungWUSSTEN SIE, DASS…
 http://www.news4press.com/WUSSTEN-SIE-DASS%E2%80%A6N_596850.html

※和訳の前半はほぼ直訳、後半はやや意訳(Googleの英訳が若干乱れているため)。

出典によると、上に示すドイツ語原文が1938年にゲッベルスが言った通り改変していない文で、頻繁に引用されている「100回」といった言い回しは短く改変されたものらしい。

したがって、『ゲッベルスは「嘘も100回言えば本当になる」と言った』というのは嘘と言うべきだ。この引用自体が「100回」の繰り返しで信じられるようになった「嘘」だった。何とも皮肉なことだ。

言いたいことは伝わるので「まるっきり間違っている」とまでは言えないにしても、意訳として許される範囲を超えてオリジナルのニュアンスを変えている。

では、この「100回」という「嘘」は、いつ・誰が・どこで最初に用いたのだろうか。色々と興味は尽きない。

『ヒットラーが「我が闘争」の中で書いている』という情報もあったが、オリジナルでは確認できなかった。どの本の何ページにあるのだろうか。

今回発見したドイツ語の出典についてはさらに詳細な情報の調査を予定している。関連する研究者の方で詳しい情報をご存じの方はお知らせいただきたい。変化があれば続報を書く。

※日本では「ゲッペルス」と表記・発音されることが多いが、正確には「ゲッベルス」(Paul Joseph Goebbels)である。

※2011.06.23(木)05:00追記:
上記出典(ドイツ語オリジナル)著者Jurij Below氏にメール(英文)で照会したところ、Prof. Bernd Hamm, University of Trier による論文(下記PDF、当然ながら全文ドイツ語)から引用したとの返信があった:
Medienmacht – wie und zu wessen Nutzen unser Bewusstsein gemacht wird
Von Prof. Bernd Hamm, Universität Trier
http://magazin.cultura21.de/_data/magazin-cultura21-de_addwp/2010/10/200705_Medienmacht_Hamm.pdf
引用箇所は上記PDF冒頭にあるのですぐ分かる。Jurij Below氏のメールにはさらに当該のゲッベルスによる演説の音声録音ファイルについても示されていた。当該引用部分が確認できたら追記にて録音ファイルを掲載する。

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Comments

非常に興味深く読ませていただきました。演説音源があるという事ですが、どの演説の物か教えていただけませんか?こちらでも1938年というキーワードでネット上や手持ちの文献を当たってみたのですが信頼出来るソースは発見出来ませんでした。

Posted by: 伯林 | May 31, 2013 at 05:23 AM

伯林 様

コメントありがとうございます。

録音についてはJurij Below氏のメールで下記にあると紹介されています:
http://nsl-archiv.com/Tontraeger/Reden/

上記から検索していくつか聴きましたが該当箇所は確認できず調査を保留しています。

ご関心があるようでしたらJurij Below氏に直接メールなさるとよいかと存じます。新たな知見がありましたら是非ご一報ください。

Posted by: 中村友一 | May 31, 2013 at 05:58 AM

中村様
早速お返事ありがとうございました。リンク先拝聴しているところです。もう少し自分で探してみて分からなければ問い合わせしてみたいと思います。

Posted by: 伯林 | May 31, 2013 at 06:20 PM

とても興味深く、面白いです。
「100回」自体が嘘だったとは。
頻繁に見てたんで真実かとおもってました(汗

Posted by: | Jul 12, 2013 at 02:46 PM

以前コメントさせていただきました伯林です。
こちらのプロジェクト存続されていますか?
多大なる興味を持って時々ブログを訪問させていただいています。
少し前のことになりますが、仏アングレーム国際漫画祭に関してもこのフレーズの引用を確認できました。サイトの主旨とは関係ないですが、このページ中上部のナチスの旗が背景になっている画像です。
http://piyopiyo-party.at.webry.info/201402/article_3.html
それから、以前コメントにご返信いただいた後、Jurij Below氏、Prof. Bernd Hamm氏、また音源アーカイブサイトに問い合わせましたが、どなたからも残念ながら回答が得られませんでした。
また教えて頂いたアーカイブの音源もすべて確認しましたが、問題の箇所は存在しませんでした。

Posted by: 伯林 | Apr 30, 2014 at 10:00 PM

伯林 様

情報提供ありがとうございます。

本テーマについては引き続き関連情報を探していますが、残念ながら進展はありません。この方面の専門家からの反応を期待していたのですが、何もありません。本テーマはもう10年くらい追いかけておりますので、気長に続けたいと存じます。

ご指摘の国際漫画際での引用(厳密には著作権法上の引用の要件を満たしていませんので無断転載ですが)は私の方でも確認しております。この他にも大手サイトやツイッターに時々引用(無断転載)されているようです。

進展があればこの記事に追記する予定です。

Posted by: 中村友一 | Apr 30, 2014 at 10:25 PM

中村様
早速のご返信ありがとうございます。
仏漫画際の件、ご確認済みであったとこのと、大変失礼いたしました。
専門家ということですが具体的にはどのような方になるのでしょうか。世界レベルで見た場合、ミュンヘンのInstitut fuer Zeitgeschichteに所属している(いた?)Elke Froehlich女史が一番に思い当たりますが..。
蛇足になりますが、彼女が編集したJGの日記全29巻のキーワード検索機能を使い該当のフレーズを探しましたが、そこでもヒットはありませんでした。
続報を気長にそして楽しみに待たせて頂きます。

Posted by: 伯林 | May 01, 2014 at 04:03 AM

伯林 様

研究者情報ありがとうございます。私は(少なくとも現時点では)国内の研究家の反応を期待していますが、具体的な誰かは想定していません。この調子で何年かかるか分かりませんが、地道にやりたいと思います。

Posted by: 中村友一 | May 01, 2014 at 07:21 AM

日本語で(古代中国語で)百という数字は物理的な100を表すとは限りません
まあ日本に限らず英語だろうが何だろうがそうですが
百聞は一見に如かず
は実際に100回聞くわけじゃありませんよね。百花繚乱は百の花じゃありませんね。優れていると言われる翻訳ほど意訳になっている気がします。直訳なら誰でも出来ますからね。
はじめに訳した人が“よくわかっていた“というべきではないでしょうか。

ですが、面白い分析だとは思います。

Posted by: 百人力 | Oct 01, 2015 at 10:02 PM

百人力 様

コメントありがとうございます。

「百」が物理的な100を表すとは限らない、と言う点は同意しますが、

(1)原文の「十分に大きな嘘」というニュアンスがすっぱり削除されている。

(2)人間の認知の問題(原文の「嘘を信じる」)が「本当になる」という客観的事実の問題にすり替わっている。

という2点から、(記事本文で書いた通り)「意訳として許される範囲を超えてオリジナルのニュアンスを変えている」と、私は考えています。

新たに信頼度の高い出典が提示されない限り深追いすることは不毛ですが、興味深い議論ではあります。

Posted by: 中村友一 | Oct 02, 2015 at 01:45 PM

「ウソも百遍繰り返せば真実になる」
 と、私は池田の口から何度聞かされたかわからない。この男は本気でそう信じているから始末が悪いのである。
(元側近の暴露本『池田大作の素顔』藤原行正著 講談社1989年4月出版 42ページより)

これが初出ではないでしょうか?
私は閲覧できていませんので上記印刷物よりご確認ください。

Posted by: 匿名 | Feb 13, 2016 at 12:49 PM

匿名 様

コメントありがとうございます。

ご指摘の話は以前からネットにありましたが、出典を確認したことはありませんでした。書籍を確認できましたら別途コメントか本文に記載したいと思います。

Posted by: 中村友一 | Feb 13, 2016 at 08:13 PM

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