北九州市は事件の本質に達していない：保育園に改善勧告＝おむつ交換時にも確認怠る－園児熱中症死・北九州市（8/31・時事通信）

北九州市が中井保育園に「改善勧告」を出したそうだ。予想はしていたが、残念ながら、現時点では北九州市は事件の本質を理解していないように思う。もし、理解した上でやっているなら、この「改善勧告」は単なるパフォーマンスであり、行政としては対応する意思も能力もないということになるのではないだろうか。

改善勧告の内容は「園児のチェック表について、保育従事者が各園児の存在を直接確認して記入し、さらに管理者の確認を受けるよう求めた。」ということだ。

そんな馬鹿な！

もちろん、改善勧告で指摘された内容は安全管理上の重要事項だ。しかし、今回の事件の本質はそこではない。北九州市は事件の本質をまるで理解していないのではないだろうか。

8/10の記事でも述べたが、今回の事件は起こるべくして起こっていると思う。運営する組織の性質に重大な要因が隠されているからだ。

中井保育園の事件の要因となった組織としての性質を列挙してみよう：

（１）賠償責任保険などに加入していないのに保険に加入していると宣伝、実際に事故が起こって保護者から保険の適用を請求されるとウソを突き通す、被害者の園児を確認しないまま連絡帳に「昼寝」と記入する、といったように、意図的かつ常習的に虚偽の報告を行う体質があった。

（２）事業運営は余裕がない状態で、従業員への給与支払いや社会保険加入に関する問題もあった。

（３）市の安全研修会に一度も参加したことがない、業務請負で保育士（見習い）の求人を出すなど、その運営姿勢には幼児保育の根幹を揺るがす根本的な問題がある。

行政はこれらの要因を見抜き、監視するべきだ。もし、困難だというなら、（誰かが）世論を動かしてそれが容易になるように働きかけなければならない。

今回、北九州市が出した改善勧告は上記（１）～（３）の本質に迫っていない。中井保育園に関しては、全く意味が無い対応だ。

北九州市の担当者は優秀な人材が多い。彼らは今回の改善勧告で事件の再発が防止できるとは信じていないだろう。この改善勧告はお役所仕事を粛々と処理しただけだ。組織の疲弊によって、事件の再発防止を本気で考えられる状態にないのだろう。この点で、北九州市の担当者は同情に値する。私としては、北九州市の担当者をガンガン批判する気分ではない。

しかし、行政担当者にはしかるべき社会的な責任を果たす義務がある。このままではいけない。時間がかかっても、誰かが何かを変えなければならない。

何も変わらなければ、似たような事件がまた起きることになる。

以下、引用記事：

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http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007083101051
2007/08/31-20:38 保育園に改善勧告＝おむつ交換時にも確認怠る－園児熱中症死・北九州市

　北九州市小倉北区の私立中井保育園（北村寿和園長）の送迎車に放置された園児の浜崎暖人ちゃん（２）が熱中症で死亡した事故で、市は３１日、児童福祉法に基づき同園に改善勧告し、１０月１日までに改善計画をまとめた文書を提出するよう求めた。
　事故は７月２７日に発生。園外保育から戻った園児らが車を降りる際、同乗した職員らが人数確認を怠り、暖人ちゃんは車内に３時間以上放置された。当時の車内温度は５０度近くになっていた可能性が高いことが判明している。
　市は勧告で、車が保育園に到着して以降のおやつ提供やおむつ交換の際にも、職員が暖人ちゃんがいるかを確認していなかったと指摘。園児のチェック表について、保育従事者が各園児の存在を直接確認して記入し、さらに管理者の確認を受けるよう求めた。

（8/31・時事通信）

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